りゅうおうのおしごと!アニメメイキングセミナー 2部

 前回のブログの続き始めます。

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 1部でキャラクターデザインについてのお話がされまして、第2部開幕でございます。1時間ほどの休憩をはさんでから、15時よりスタート。

 座席の配置は1部と同じ。そう言えば、矢野さんが1部と髪型変えてました。

 第2部のテーマは「シーンを描く」ということで、柳監督による、絵コンテや演出についてのお話がメイン。個人的に、柳監督の手がけている作品は好きな物が多いという事、りゅうおうのおしごと!に関しては、将棋シーンや、コミカルなシーン、シリアスなシーンと見所がたくさんあったので、その辺の話が聞けたらいいななんて思ってました。

 まず、シーンを描くという事にあたって、

①動かない勝負をどう表現するか

②コンテの描き方(尺・作画カロリー・カット数)

③原作をどうまとめていくか

という事が議題とされていました。議題っていうのかな?よくわかんないけど。とりあえず、この3点について話して行きますよ、的な。

 

 絵コンテをいくつか見せていただき、絵コンテの作り方からまず話が始まって行きます。実際、絵コンテってどうやって描いてるのか気になっていたのですが、監督の描いた1話のコンテは非常に描き込みが多く、コンテってここまで描くの?って思うくらいの物でした。さすがに全話コンテを描いて演出をやってさらに監督をやるというのは、常人ではまずあり得ない所業なんだなと思いました。

 絵コンテに関して言えば、以前「絵コンテの鬼」と言われている、奥田誠治さんと幸運にもお話させていただく機会があり、その時に少しだけコンテに関して聞いたのですが、自分のイメージを如何にわかりやすくコンテに落とし込めるか、という様な事をおっしゃられていたのですが、柳監督のコンテはまさにそれでした。一目見て、わかりやすい!という印象。これに関しては矢野さんも「監督のコンテは描き込みが多くて作業しやすかった。」という感想を。

 今まで、絵コンテ集とかも好きで色々見てきてはいたけども、有名な演出家さんやコンテマンの方のコンテを見ると、素人でもシーンがわかりやすい物がとても多かったです。それに、実際の本編の出来映えも、カメラワークや演出がすごく印象深かったりもして、さすが○○さんのコンテ回だなぁ〜なんて言われたりもしてるわけです。

 

 柳監督のコンテ作成の話の中で、「コンテにはパズル要素もあり、入れ替えがしやすい。」という話も出てきました。シーンをイメージしやすい設計図というコンテがあれば、いざ作り込む前に入れ替えて考えられると言うのは大事な要素だと思うので、絵コンテ一つで大きく印象が変わってくるのだと思ったのです。

 りゅうおうのおしごと!の絵コンテでは、やはり将棋を扱った作品なので、シーンの印象を決める所を、キャラクターの表情と、棋譜でも表現していたと言う事。大きいコマ割り部分のコンテでも盤上の所まで描かれ、実際に将棋がわかる人にはその部分まで見て美味しい作りになっています。

 また、コミカルなシーンでは、カメラアングルなども一気に非日常的になり、斜めから見るアングルで不安感や、非日常感を演出したとの事です。

 

 また、この作品の将棋盤、将棋駒などは全て3Dで組まれているため、コンテを3Dの方々も見る為、その辺を踏まえてコンテを書き込んでいたそうです。

 

 コンテの段階で、将棋の盤上をガッツリ出さず、斜め下から将棋盤を見上げるような描き込みをしている所もあり、その部分が作画カロリーのカットにつながるようになっているとの事。

 作画カロリーとはなんぞ?というとこなのですが、例えば、将棋を指す時に、将棋盤が見えるように作画すると、指と将棋の駒を同時に動かし、それが連続したシーンとなると、作画枚数が極端に増え、原画マンの人の作業量も増えるし、予算的な部分でもしんどい、と。そう言った部分も考えながらコンテを作るそうで、、、こりゃ大変な作業ですわ。

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 例に挙がってたのが、上の画像のシーンだったのですが、このシーンでは盤上に散らばった駒を一つ一つ取りながら並べて行く所なんですね。ただ、これを下から見る事により、散らばった駒を動かす事無く、手だけ動かせば、駒を自陣に並べている絵が出来上がるというわけです。

 他にも、シーンが長時間経過した事を表現するために、コンテの段階から、唐突に入ってくる夜の外の様子などを描き込んで行く事で、シーンの時間経過というのもわかるようになっているそうです。

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 作画カロリーの話で言えば、上の2つ、全く違う話数の、全く違うキャラの指先なのですが、色を変えたり、背景を変えたり、微修正をすることで、原画を使い回しする事も出来るという話も。これは結構他のアニメの中でも多く見られる事ですね。こういう努力があって作られてるんだよなぁと思うと、アニメの見方がまた変わってきます。

 

 そして、事前に送っていた課題の講評のお時間。トレース台とカメラの位置の関係で、柳監督と矢野さんの座席交代。お題は、シナリオはあったけれど、アニメではカットされてしまったシーンのコンテを描いてみましょうという内容。アニメ1話分で大体250〜300カットのコンテが描かれるそうです。そして、シナリオの1ページに付き、大体15カットくらいが目安だそうです。そんな事はまったく知らず、シナリオ1ページ分につき、5カットでまとめたというかぶち込んだ私の絵コンテ。講評もクソも無いな、、、と思ったら、表現の部分で監督とは発想が違う部分があったと、1部の下手くそな絵に続き、再び殴り書きの下手くそな自分の描いたコンテがスクリーンに映し出され、再び心臓止まるかと思ったw

 シーンはカツカレーを食べる所だったのですが、監督の作ってこられたコンテを見ると、かなり詳細に描き込まれていて驚きました。セリフと画面をうまくあわせていく手法や、カレーを掻き込むような連続したシーンの最後をスローにして、シーンの終わりを見せると言った手法など、20カットくらいのコンテから、たくさんの絵が想像できたのでした。当然のように、シナリオに描かれていない場面も補完しながら描いていらっしゃったので、より絵が見えやすくなっていました。この辺の知識をふまえて、もう一回課題描き直したい…。

 

 そして、2部の内容のまとめに入って行きます。

「シーンを描く時に、温度感なども入れて行きたい。全体のシナリオの中からストップウォッチで計りながら時間も決めて作っている。」

「コンテに関しては、自分も講義を受けている気持ちになった。コンテをもらった時に、もっと読み込んでいかないとならないと思う。作打ちなどでも、コンテはすでに出来上がっているので、コンテに関しての大きい説明が余り無いので、もっと読み解かないとならないと思った。」

と言ったお話。

 

 そして、再び質疑応答のコーナー。

Q、コンテとして表現の難しかったものは?

「将棋を打つシーンが多くあるため、正座をする事がどうしても多いが、その部分の表現が難しかった」

 

そして、個人的に柳監督に聞きたい事があったので、意を決して手を挙げ質問。

Q、シーンに緊迫感などを出す時に、壁などの背景を写したりして間を持たせてるときがあるが、絵コンテの段階である程度の演出は決まっていますか?それとも、演出の担当の方の手によるものが多いですか?

 と言うような内容だった気がする。矢野さんは何度かお話した事あるので、最近は話をする時に緊張する事はなくなったけど、柳監督は初めてお会いしたため、さすがに緊張してしまった。軽く声震えてなかっただろか…w

「コンテ発注の段階で、ある程度の手数は決めている。また、そういった演出に関してはコンテマンや、演出さんの個人の好みの部分もあったりする。」

という回答、ありがとうございましたm(_ _)m

 

他におもしろかった質問としては、

Q、文字媒体とアニメでのメディアのバランスの違いとは?

「アニメーションは絵で見てわからせる事が出来る物で、それによって説明を省ける。例えば、フォークを持つシーンでも、小説では文字にしないと伝わらないが、アニメでは音声をつけなくても、絵だけでわかるように出来る」

 

Q、ロウきゅーぶ!SSで監督デビューしてからロリアニメの監督が多い気がするが…

「ロリアニメが好きで監督に志願したのではなく、可愛くキャラクターに動いてもらうのが好きで、それで始めたらいつの間にか定着して…wとは言っても、やっていて楽しい。ロリアニメの監督と言われても仕方ないとは思っている。」

 

 そんなこんなで、濃密だったけど、あっという間な90分×2本のセミナー終了。実際に制作している方の制作秘話的な物を聞くのは楽しいですが、今回のセミナーはどちらかと言うと制作秘話はオマケ的な内容で、どうやって作り上げていったかという話でありました。

 監督にしても、矢野さんにしても、ぼくは大好きな方達なので、今回の作り方の話を聞き、2人の携わってきた作品をもう一度全部見たいと思いましたし、今後このお二方の携わるアニメに関しては、キャラクターの動かし方であったり、演出の仕方など、こういう意図があるんだろうなという事を考えながら見る事ができそうだと思います。

 

長丁場の講義お疲れ様でした。また、こういう機会があれば参加したいと思うイベントでした。